酒と蘊蓄の日々

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のび太のちり紙 (その2)

いまの大阪府知事は偶然にも私とタメで、誕生日も2週間くらいしか違いません(ま、どうでもよい話ですが)。彼は鴨下環境相の要請を受けてバイオエタノールの販売拡大に前向きのようです。有り体に言わせて頂くなら、あまり深く考えもせず、政治パフォーマンス的に大衆やメディア受けを狙っているようにしか見えませんけどね。

一方、珍しいことに日本の政治家にもこうした状況に異議を唱える人が現れました。

小池元防衛相:バイオエタノール、日本主導で開発中止を

 小池百合子元防衛相は10日、名古屋市で開かれた「ミッドランド毎日フォーラム」(毎日新聞社主催)で講演し、トウモロコシなどを原料とする代替燃料バイオエタノールについて「中長期でみれば開発は大いに疑問で、どこかで破綻(はたん)する。北海道洞爺湖サミットで議長国として反対方針を国際標準にすべきだ」と述べ、日本政府が主導して開発中止で国際合意を目指すよう主張した。

 トウモロコシ価格はバイオエタノールの原料としての需要の高まりで国際的に急騰している。

 小池氏は「食卓は異変をきたしている。食の安全保障を考えると市場原理に任せておくべきではない」と指摘した。

(C)毎日新聞 2008年3月11日


この記事に彼女の講演内容は詳しく紹介されていませんが、これを読んだ限りではバイオエタノールを生産するためのエネルギー収支を見てCO2排出削減の実効性があるかないかといったことではなく、食糧供給への悪影響を懸念するものと考えて良いでしょう。

現実問題として、バイオエタノールの生産拡大は食糧供給に大きな影響を与え始めています。いま大豆や小麦の価格が高騰しているのは、アメリカでバイオエタノールの原料となるトウモロコシへの転作が進んでいるということも原因の一つとして無視できないのは皆さんもよくご存じのことと思います。

また、大食いタレントが毎日のようにメディアに露出し、大食いがブームになっている日本では忘れられがちですが、世界には飢えている人々が沢山いるんですね。いま、全世界で飢餓に苦しんでいる人々、即ち栄養不足人口は約8億4200万人と見られています。さらに、全世界で毎年1500~1700万人くらいが餓死しているといわれています。

こうした現実を考えず、実効性の有無が科学的に充分検討されないまま、盲目的にバイオエタノールの生産拡大を推進していくのは、大いに疑問です。

そもそも、全米で生産されているトウモロコシは全世界の生産量の約40%を締めますが、これを全てバイオエタノールにしても、全米で消費される自動車の燃料用ガソリンのわずか7%しか賄えません。しかも、前回お話ししたとおり、どこまで信頼できるか解らないアメリカ農務省の推計でもバイオエタノールのエネルギー収支は1.34倍の黒字でしかありません。

仮に、バイオエタノールを生産する際に投入されるエネルギーの100%が化石燃料由来だとしたら、全米で生産されているトウモロコシを全てバイオガソリンとして消費しても、全米の自動車から排出されるCO2の正味の削減効果は2.5%にも満たないということになるでしょう。これでは、どこまで有意義な事業といえるのか非常に大きな疑問が残ります。

一方、カナダのブリティッシュコロンビア大学とアメリカのウィスコンシン大学の共同研究によれば、アメリカのトウモロコシ増産がメキシコ湾の「死のゾーン」と呼ばれる低酸素地帯の状態を悪化させるとする研究報告もあります。トウモロコシの生産で使われる窒素肥料による影響とするシミュレーション結果に過ぎませんけどね。

この他にもトウモロコシの栽培には小麦や大豆より多くの水分を必要とすることから水資源への悪影響を懸念する研究報告などもありますし、ブラジルのサトウキビ増産にもやはり悪影響の指摘がなされています。こうしたダイナミックな変革が自然環境にも深刻な影響をもたらすとするアセスメントはいくつも報告されているんですね。

もちろん、今後も技術革新によってバイオエタノールの生産にかかるエネルギー収支が改善されていくのは間違いないと思います。日本では廃材や間伐材などからバイオエタノールを生産する技術も研究されています。現在の状況だけでバイオエタノールそのものを一概に否定すべきではないかも知れません。

問題なのは「バイオエタノールはカーボンニュートラルで地球に優しい」と多くの人が信じている一方、根本的な部分で充分な検討がなされてきたとは思えないことです。いくつかのアセスメントの結果はありますが、こうした試算は(先日少し触れた警察白書のように)数字のトリックが用いられやすいものです。それを見抜けるほど詳細な情報を私のような素人が簡単に確認できるような状況ではないんですね。

風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギー開発事業、あるいはリサイクル事業など、他の事例も似たようなところがあります。総じていえば、こうした新機軸を推進しようとしている人たち(特に政府関係機関や関連企業など)ほど楽観的な数字を示し、こうした新機軸に懐疑的な人たちほど悲観的な数字を示しています。私のような素人はどちらを信じれば良いのか、具体的な情報が不足していますからよく解らないんですね。

私の場合は以前から述べている通り、地球温暖化がCO2の温室効果によるものだとする仮説も鵜呑みにはできないと思っています。百歩譲ってこの仮説が正しかったとしても、その対策事業と称するものに疑念を抱かずにいられません。それはこれまで述べてきたように、その実効性が科学的に充分検討されないまま「これをやっておけば地球環境に良い」とプロパガンダし、盲目的に推進されているケースが目立つからです。

「環境にやさしい」という甘い言葉で進められている事業が、実は「のび太のちり紙」のごとき愚行だったということもあるかも知れません。本当にそうなのか否か、どのように確認すればよいのか、これだけエコエコと毎日呪文のように唱えられているにも関わらず、あまりにも情報が乏しすぎることに何故不満の声が上がらないのか、私には不思議でなりません。

(おしまい)

テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

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