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任せて安心?

これまでにも環境問題について認識の甘さを色々書いてきましたが、また何とも情けない話を見つけてしまいました。読売新聞から抜粋します。(既に1週間近く経過していますので、すぐにリンク切れになると思いますが。)

廃木材バイオ燃料の普及難航、石油業界の協力なく

廃木材を原料にした世界初のバイオ燃料の普及を進めようという環境省のプロジェクトが難航している。

 大手石油会社が、品質が確保できないことなどを理由に、自ら推進するバイオ燃料しかガソリンスタンド(GS)での給油を認めないためだ

(中略)

 石油連盟(東京都千代田区)は、エタノールと石油系ガスを合成した「ETBE」をガソリンに混ぜたバイオ燃料の普及を進め、E3には協力しない姿勢を打ち出している。

 「精製所で作るETBEに比べ、ガソリンと直接混ぜるE3は水分が混入しやすい」というのが連盟側の主張だが、環境省は「そんな事例は海外でも聞いたことがない。石油業界も協力してほしい」と困り果てる。

(後略)

(C)読売新聞 2008年3月15日


「ガソリンと直接混ぜるE3は水分が混入しやすい」というのは品質管理のやり方次第ですから、必ずしも正しいとは言えません。が、そもそもこの記事は石油連盟の主張を正しく伝えていません。これを書いた記者は環境省サイドしか取材していないのでしょう。石油連盟は『エタノール直接混合(E3等)の問題点』の1頁で以下のように説明しています。

1.品質確保法上の問題

流通過程でのエタノール直接混合により不良ガソリンが出回るおそれ有り

エタノールガソリンは流通過程の水分混入を防ぐため、ローリー積込み直前で混合・出荷。

 ↓

しかし、品確法では、品質確認を製油所出荷時に義務付けているのみで、出荷以降(油槽所での混合)は品質確認義務がないため、不良ガソリンが出回るおそれ有り。

e3_delivery.gif


水分混入を防ぐためにタンクローリー積込み直前に混合する事例が海外にないかというと、そんなことはありません。経済産業省の『エタノール混合ガソリンの国内流通インフラへの影響』10頁には以下のように書かれています。

米国では、ガソリンへのエタノール混合は製油所のブレンダーではなく、油槽所において出荷ポイントの混合充填設備において実施されている。
(理由) 水分混入防止、汚れ混入防止のため


品質管理をどう徹底させるかは法整備によるところも大きいはずですから、日本の現行法では不良ガソリンが出回る恐れがあるとする石油連盟の懸念にも一理あるでしょう。

また、厄介なのは不充分な品質管理で実際に水分が混入してしまった場合です。通常のガソリンや、現在流通しているETBE(エタノールとイソブテンから合成される化学物質)というかたちで混合したガソリンは水分が混入しても相溶性が低いため、混和しにくく、性状変化も殆どありません。

しかし、エタノールそのものは水との相溶性が高く、E3などの直接混合ガソリンに水分が混入すると、相分離が起こりやすいとされています。ガソリンに直接混合されたエタノールがガソリン相から水相に移動すると、設定したガソリン品質(オクタン価、蒸留性状等)を保てず、著しい場合にはガソリンの規格を外れてしまうこともあるそうです。これでは売り手としても品質保証が難しくなり、敬遠したくなるのも当然でしょう。

そうした事情を説明するため、新日本石油はメディア向けに通常のガソリンとETBE混合ガソリン、エタノール直接混合のE3それぞれに水分を混入させる実験でデモンストレーションを行っています。

e3-etbe_test.jpg
新日本石油による実験デモ
ETBE混合ガソリンに水分を混入させても
水分だけ沈殿するため変化は見られない。(写真右)
一方、E3に水分を混入させると
エタノールがガソリン相から分離して
水相へ移動するため白濁する。(写真左)


他にもE3のような直接混合方式の問題点は石油連盟の『エタノール直接混合(E3等)の問題点』に纏められています。もちろん、彼らとしても余計なコストを裂きたくないとか、余計な流通経路を絡ませて既得権益を損ないたくないとか、裏には諸々の思惑もあると思います。が、それはそれとして、彼らの主張する理由に破綻は見られません。

こうしたエタノール直接混合ガソリンの問題点が石油連盟から具体的に示されているのですから、環境省はきちんと科学的な根拠をもって反論するなり、対策案を示すなり、正々堂々と対抗すべきでしょう。「そんな事例は海外でも聞いたことがない」などという不明瞭なコメントでは説得力のかけらもありません。

結局のところ、環境省は京都議定書のCO2排出削減義務を見通しの甘い目標達成計画のスケジュール通りにこなしたいという、その思惑だけでゴリ押ししているようにしか見えません。折角、「庁」から「省」に昇格してもらったというのに、こうした実情を精査することもなく「困り果てる」ような人たちに任せておいて良いんでしょうかね?

テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

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