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憲法の主旨を知らない日本人

例のドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』(以下『靖国』)の上映中止を巡り、この週末の情報番組などはこぞって話題にしていました。



が、どうもピンボケなことを言っているのが気になりましたね。特に「憲法で保障されている表現の自由の危機だ」的な論調は根本的な部分を履き違えていて、かなり間抜けだと思いました。

そもそも、憲法とは国家や政府の原理や規範を定めるものです。ですから、憲法によって保障されている国民の権利というのは、国家権力の行使によって侵害されてはならない国民の能力や自由を意味します。同様に、憲法に定められている義務もまた、国家と国民の間にかかるものです。

いうまでもなく、今般の騒動は国家権力によって上映中止に追い込まれたものではありません。映画館を運営する民間会社のヒューマックスシネマ、ティ・ジョイ、Q-AXシネマ、エスピーオーの4社(5館)が自主的に撤退してしまっただけです。

ヒューマックスシネマに関しては右翼の街宣車が抗議を行ったり、脅迫めいた抗議電話などもあったようですが、それ以外の3社には具体的な抗議や申し入れすらなかったそうです。もし右翼から抗議があったら近隣へ迷惑がかかるだろうといった配慮だったり、安全な上映環境が整わなかったなどの判断で上映中止が決まったという状況です。

もちろん、日本での上映が全面的に中止されたわけでもありません。当初18館で上映される予定だったのが、先週末までの時点で5館減って1館延期になって1館増えて、13館になっただけです。これは怖じ気づいた一部の映画館が離脱しただけと見るべきでしょう。

日本政府が裏からプレッシャーをかけて上映中止に追い込んだというのなら話は別ですが、そのような国家による弾圧があったとはまず考えられない状況です。首相や官房長官、文科相らは、こうした自粛に対して公的に遺憾の意を表していますし、そもそもこの映画の制作には文化庁所管の独立行政法人である日本芸術文化振興会から750万円の助成金が出ています。

例の国会議員を対象とした試写会が検閲めいており、上映中止が広がるきっかけになったと論じているメディアも少なからずあります。確かに、経緯としては自民党の稲田朋美衆院議員らがこの映画に公的な助成金が出ていることに疑問を呈し、視聴の要望を受けた文化庁が試写会をお膳立てしたのは事実です。

しかしながら、当の稲田議員自身が「私たちの行動が表現の自由に対する制限でないことを明らかにするためにも、上映を中止していただきたくない」との談話を発表しているほどですから、「国家による表現の自由の侵害」という構図は、どう考えても成り立つような状況ではないでしょう。ま、試写会はデリカシーに欠けていたと思いますけどね。

むしろ、今回の騒動は議員を対象としたこの試写会よりも、『週刊新潮』が「反日的」と評したことで右翼が動き始め、それがきっかけとなったような気がするんですけどねぇ。ま、大衆メディアは案外同業他社に甘いので、論点をすり替えてしまったのかも知れませんが。

それはともかく、こうした状況を以て、今般の上映中止騒動が「憲法で保障されている表現の自由の危機だ」と騒ぐ人達は、憲法が規定している主旨が何なのか理解していないということになるでしょう。5大紙のうち、「憲法の理念をあえて持ち出すほどの問題だろうか」とした産経新聞を除く各紙の社説はそういう意味で全て的外れといわざるを得ません。

念のため、この問題に対する個人的な見解を明らかにしておきますと、私も一部とはいえ上映が中止されたことについては非常に残念だと思っています。これは日教組の集会をドタキャンしたプリンスホテルに対しても全く同じことが言えますが。

映画『靖国』の上映中止騒動にしてもプリンスホテルの一件にしても、憲法に反するとか何とか、そういう問題ではありません。いずれのケースも、民事の問題です。恐らく、日教組はプリンスホテルに対して契約不履行の損害賠償請求というかたちで民事訴訟を起こすでしょう。示談による和解が成立しなければ、プリンスホテルは間違いなく敗訴し、相応の賠償金を支払うことになるでしょう。

しかし、プリンスホテルが憲法違反で告発されるなどということは絶対にあり得ません。もちろん、『靖国』の上映を中止した映画館の運営会社4社も同様です。何故なら、日本国憲法・第3章「国民の権利及び義務」は民間人同士の権利や義務を縛るものではないからです。

こうした憲法の主旨が理解されていない現状は教育の失敗といわざるを得ないでしょう。憲法改正の論議を始める前に、まずは国民の再教育を優先させるべきかも知れません。

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